日本企業にとって、中国市場はとても魅力的な市場であり、今やEC市場も急速に成長しています。そこで、今回は中国の越境EC市場の特徴とポイントについてまとめてみました。
中国のEC市場の規模と成長
中国のEC市場は、2019年には6.5兆円を超える規模に達しました。現在、中国は世界最大のEC市場であり、今後も継続的に拡大することが見込まれています。特に、2020年には新型コロナウイルスの影響により、EC市場が急激に成長したこともあり、今後の拡大が期待されます。
中国の現状EC化率とその成長率
近年、中国ではEC(電子商取引)市場が急速に拡大しています。2021年時点でのEC化率は約44%であり、年々成長を続けています。インターネット普及率の向上やスマートフォンの普及、そして新型コロナウイルスの影響によるオンラインショッピングの需要拡大などが、EC市場の拡大を後押ししています。また、アリババやJD.comなど大手EC企業が、技術革新やインフラ整備に力を入れることで、中国国内の物流や決済システムの発展に貢献しています。このような背景から、中国のEC市場は今後も高い成長率を維持すると予測されます。
中国で越境ECサイトのシェア率
越境ECサイトとは、海外の消費者に向けて商品やサービスを提供するオンラインショッピングサイトです。中国では、越境ECサイトが次第に増加し、国内の消費者に対して多様な商品やサービスを提供しています。特に、欧米や日本などのブランド品や高品質な商品が人気を集めています。
2021年時点で、中国の越境EC市場のシェア率は約10%程度とされていますが、今後も成長が見込まれます。政府は、越境EC市場の発展を促すために、税制や規制の緩和を進めており、これが越境ECサイトの拡大につながっています。また、越境ECサイトを利用する消費者のニーズが高まっており、消費者の求める価格や品質、そして利便性を満たすことが、越境EC市場の競争力向上に繋がると考えられます。
中国のEC市場の特徴
中国のEC市場は、日本のEC市場とは大きく異なる特徴があります。その中でも、注目すべき特徴として以下の3点が挙げられます。
モバイルでの利用が一般的
中国では、スマートフォンを使ってECサイトを利用することが一般的です。これは、中国のPC所有率が低いことによるものです。日本でもスマートフォンを使ってECサイトを利用する人が多いですが、中国よりはスマートフォンに特化していません。それだけ、中国の方がECに抵抗がないユーザーが多いとも言えます。
アリババ系が圧倒的シェアを占める
日本では、Yahoo!やAmazon、楽天が圧倒的なシェアを占めていますが、中国のEC市場では、アリババ系(淘宝・天猫・京東)が圧倒的なシェアを占めています。そのため、これらのECサイトを使った越境ECが主流となっています。
広告が非常に重要
日本でもSNSによる情報発信やWEB・SNS広告を活用して、ECサイトに集客し、売上を伸ばす、といった手法が一般的になりつつありますが、中国では、より広告が重要になります。特に、有名人のインフルエンサーや口コミを活用した広告が一般的で、大きく売上に影響します。
中国のEC市場のマーケティング手法3選
- ライブコマース: 中国では、ライブストリーミングを活用したEC販売が非常に人気です。リアルタイムで商品説明やデモンストレーションを行い、消費者とのコミュニケーションを図りながら商品を販売する手法です。この手法は、消費者の購買意欲を高める効果があります。
- インフルエンサー(KOL)マーケティング: 中国では、インフルエンサー(KOL:Key Opinion Leader)を活用したマーケティングが盛んです。インフルエンサーが商品を紹介・宣伝することで、信頼性やブランドイメージを向上させ、購買意欲を喚起します。
- チャット対応: 中国のEC市場では、顧客対応は主にチャットが主流です。WeChatやアリペイなどのチャットアプリを活用し、顧客とリアルタイムでコミュニケーションを図り、問題解決やサポートを行います。
ライブコマース
ライブコマースは、ライブストリーミングを活用した商品販売の手法です。出演者がリアルタイムで商品の説明やデモンストレーションを行い、視聴者とのコミュニケーションを通じて商品を販売します。中国では非常に人気があり、特に若者層を中心に支持を集めています。インターネット環境の整備やスマートフォンの普及により、ますます拡大が見込まれます。
インフルエンサー(KOL)マーケティング
インフルエンサー(KOL)マーケティングは、インフルエンサーが商品を紹介・宣伝する手法です。インフルエンサーは、多くのフォロワーを持ち、その意見に影響を受ける消費者が多いため、効果的な宣伝が期待できます。中国では、特にSNSや動画サイトで活躍するインフルエンサーが多く、広告効果が高いとされています。
顧客対応はチャットが主流
中国のEC市場では、顧客対応においてチャットが主流となっています。WeChatやアリペイなどのチャットアプリを活用し、顧客とリアルタイムでコミュニケーションを図ることで、迅速かつ効率的な問題解決やサポートが可能となります。さらに、チャットボットを活用することで、24時間対応や一部の質問への自動応答も実現でき、顧客満足度の向上に繋がります。このようなチャット対応は、中国のEC市場での競争力を高める重要な要素の一つとなっています。
バイラルマーケティング
バイラルマーケティングは、口コミやSNSを通じて急速に広がる情報を活用したマーケティング手法です。消費者が自然に情報を拡散することで、広告費を抑えつつ効果的な宣伝が可能です。中国では、SNSや動画サイトで話題性のあるコンテンツやキャンペーンを展開し、バイラル効果を狙ったマーケティングが多く実施されています。特に若者を中心に、情報が短時間で広がるため、ブランド認知度や購買意欲の向上が期待できます。バイラルマーケティングは、中国のEC市場においても非常に重要な戦略の一つとなっています。
中国のEC市場への参入方法
中国のEC市場への参入方法は、大きく分けて以下の2つがあります。
中国国内のECサイトを利用した越境EC
中国国内のECサイト(淘宝、天猫、京東など)を利用して、越境ECを行う方法です。アリババ系のECサイトを使うことで、大手ECサイトに出店することができます。また、アリババ系は決済手段としてAlipayを利用しており、日本のクレジットカード決済とも連携しているため、安心して利用することができます。ただし、出店するだけでも
自社ECサイトを開設して越境EC
自社でECサイトを開設し、中国の消費者向けに商品を販売する方法です。中国語のウェブサイトを用意することや、決済手段のAlipayを導入することが必要です。また、物流にも十分に注意する必要があります。
これらの方法の中で、アリババ系のECサイトを使った越境ECが圧倒的に一般的です。アリババ系のECサイトは利用者が多く、決済手段のAlipayが導入されているため、販売先として最適な環境が整っています。
中国外の越境ECサイトに出展し中国内へ販売
中国外の越境ECサイトに出展し、中国国内の消費者へ商品を販売する方法もあります。これには、アマゾンや楽天などの国際的なECプラットフォームを活用することが一般的です。これらのプラットフォームは、世界中の消費者をターゲットにできるため、中国市場へのアクセスだけでなく、他の国々の消費者にも商品を販売できる利点があります。
ただし、中国外の越境ECサイトを利用する場合は、言語対応や通貨対応、配送や関税などの物流面の課題に対処する必要があります。また、中国国内の消費者に商品を売るためには、現地のマーケティングやプロモーション活動を行うことも重要です。SNSや動画サイトを活用したバイラルマーケティングやインフルエンサー(KOL)マーケティングが効果的です。
中国外の越境ECサイトを利用して中国内へ販売する方法は、アリババ系などの中国国内のECサイトに比べると、いくつかの課題があるもの(詳しく知りたい方は弊社にお問い合わせください。)の、国際的なプラットフォームを活用することで、広い市場へアクセスできるという利点があります。適切なマーケティング戦略と物流対策を講じれば、中国市場での成功が期待できます。
越境ECに必要なポイント
中国のEC市場に参入するためには、以下のポイントを押さえておく必要があります。
中国語のウェブサイトを用意する
中国の消費者は、中国語でのコミュニケーションを好みます。そのため、中国語のウェブサイトを用意することが必要です。また、日本語サイトとは異なる表記ルールがあるため、専門の翻訳会社などを活用することも重要です。
決済手段の導入
中国のEC市場では、Alipayが最も一般的な決済手段となっています。そのため、Alipayを導入することが必要です。また、日本のクレジットカード決済との連携も重要です。
配送方法の選択
中国の物流システムはまだ発展途上段階にあります。そのため、物流に十分な注意を払う必要があります。また、国際的な配送業者や代理店を活用することで、物流リスクを低減することができます。
広告の活用
中国のEC市場では、広告を活用することが重要です。有名人のインフルエンサーや口コミを活用することで、認知度を高め、売り上げを伸ばすことができます。
中国への越境EC参入する際の注意点
- 商品の適性・ニーズ調査: 中国市場で成功するためには、現地のニーズに合った商品やサービスを提供することが重要です。事前に市場調査を行い、需要が高いカテゴリーや価格帯を把握しておくことが必要です。
- 法律・規制の遵守: 中国では、日本とは異なる法律や規制が存在します。特に知的財産権や輸入規制などに注意し、適切な手続きを行うことが重要です。
- 関税・税制: 越境ECにおいては、関税や所得税、消費税などの税制について理解しておくことが重要です。これらの税負担を考慮した販売価格設定を行うことで、利益率を確保できます。
- 発送・物流対策: 中国への輸送には、配送業者や関税手続きなどの対策が必要です。適切な物流パートナーを選定し、迅速かつ確実な配送を実現することが求められます。
- 販売計画の策定: 出店後も継続的に売り上げを伸ばすためには、戦略的な販売計画が必要です。マーケティングやプロモーション、在庫管理などを計画的に行い、効果的な販売活動を展開していくことが重要です。
関税/所得税/発送量について
越境ECにおいては、輸入国の関税や所得税がかかることが一般的です。関税は、商品の種類や数量によって異なります。また、一定の発送量を超えると、輸入税率が変わることもあります。これらの税制を理解し、適切な価格設定や輸送方法を選択することが重要です。
所得税については、利益に対して課せられる税金であり、国によって税率が異なります。越境ECを行う際には、対象国の所得税制度を把握し、適切な税務対策を講じることが求められます。
商品の適性・ニーズを調査する
中国市場に参入する際、現地の消費者ニーズや市場動向を把握することが非常に重要です。適切な商品選定や価格設定ができるよう、事前に市場調査を行いましょう。具体的には、競合他社の商品ラインナップや価格帯、トレンドを分析することが役立ちます。また、中国の消費者が好むデザインや機能性についても調査し、適切な商品開発やカスタマイズを行うことが求められます。
出店後の販売計画を立てておく
中国市場への越境EC参入後も、継続的な売り上げを維持・拡大するためには、戦略的な販売計画が必要です。具体的には、以下の要素を考慮した計画を立てましょう。
- マーケティング戦略: ターゲット層やプロモーション方法を明確にし、適切な広告活動やSNSマーケティングを展開します。
- 在庫管理: 需要予測に基づき、適切な在庫量を維持し、納期遅れや品切れを防ぎます。
- カスタマーサポート: 顧客からの問い合わせやクレーム対応を適切に行い、顧客満足度を高めます。
法律の違いについて
中国市場に参入する際には、日本とは異なる法律や規制に注意する必要があります。以下に具体的な注意点を挙げます。
- 知的財産権: 中国では、特許や商標の保護が日本とは異なります。事前に適切な権利取得を行うことで、知的財産権の侵害リスクを回避できます。
- 輸入規制: 一部の商品には輸入制限が存在します。対象商品や許可が必要な商品について、事前に確認しましょう。
- 衛生基準・安全基準: 食品や化粧品など、特定の商品は中国独自の基準が設けられています。これらの基準を満たすよう、適切な品品質管理や製造プロセスを整えることが重要です。
- データ保護法: 中国では、個人情報の取り扱いに関する法律が厳格化されています。適切な情報管理体制を整備し、法律に則った取り扱いを行うことが必要です。
- 雇用法・労働法: 中国市場でビジネスを行う際、現地スタッフを雇用する場合があります。その際は、中国の雇用法や労働法に従い、適切な労働条件を整備しましょう。
- これらの法律や規制に関しては、現地の専門家やコンサルタントと連携することで、適切な対応が可能になります。また、事業展開にあたっては、適切なビジネスパートナーを選定し、市場へのアプローチをスムーズに進めることが重要です。
越境ECを中国向けに実施するにあたり、法律などの観点から規制や注意事項を下記のブログに纏めましたのでそちらも良ければご確認ください。
まとめ
中国の越境EC市場の特徴とポイントについてまとめてみました。中国のEC市場は、日本のEC市場とは大きく異なる特徴があり、参入には様々なハードルが存在します。しかし、アリババ系のECサイトを使った越境ECは、販売先として最適な環境が整っており、今後も成長が見込まれています。
株式会社Better WEBの越境EC支援サービス
弊社は各国向けの越境EC事業の支援サービスを提供しています。
Shopifyを用いた越境ECの構築
弊社はShopify Japanのパートナーとして、国内向けECのみならず、海外向けの越境ECも構築・運用支援をしております。Shopifyを用いることで越境ECの構築費用を相対的に安くすることが可能です。Shopifyを用いた場合の越境ECサイトの構築費用は以下のとおりです。
・Shopifyの基本プラン:月額29ドル(約4,000円)
・翻訳、ローカライズ、デザイン、プログラミングなどの越境EC構築作業:約150万円〜350万円程度 *1(*1 商品数や必要な機能等によって金額の増減はあります)
・Shopifyのプラットフォームに加え、アプリを導入した機能追加作業:約数万円〜数十万円程度
・運用支援サービス*2(*2 必要に応じて、運用支援サービスを提供しております)
ただし、中国に向けた越境ECに限って言えば、Shopifyでは構築できません。詳しくは以下からお問い合わせください。